背景
人工装具は、身体障害者の生活を大きく変える画期的なテクノロジーです。義肢や装具などのおかげで、本来動けなかった人も歩き回ったり、自立したりできるようになります。近年では技術の進歩もあり、バイオニックリムやエクソスケルトンなど、より高度なデバイスも生まれています。
しかしながら、技術が進化する一方で、上質なコンポーネントや素材は限られており、業界において課題となっています。人工装具や矯正器具は入手しやすいものでもなく、また価格も低いものでもないため、誰もがそのメリットを享受できるわけではありません。
2021 年設立の Revival Bionics 社の CEO である Guillaume Baniel 氏は、障害を持つ人の生活を向上したいというビジョンを掲げており、同社などは、課題克服や障害者の生活向上のための研究開発に力を注いでいます。
課題
2018 年、Baniel 氏自身も障害を抱えることになり、既存の機器では自身の状態を完全に改善することができないことを思い知りました。エンジニアである同氏は、自身の麻痺した左足のための義足のプロトタイプを開発し、その成功を経て起業し、切断手術を受けた人たちを助ける決意を固めました。
今日、Revival Bionics 社は業界をけん引する企業にまで成長しており、人工装具による可能性を広げ、障害を抱えた世界中の人たちに希望を与えています。その使命は障害を完全に克服することで、最初の製品 (下腿切断者のための電動義足) の開発に際し、同社は世界で最高のパフォーマンスを発揮するコンポーネントを探し求めていました。そこで出会ったのが RLS であり、RLS エンコーダがモータの制御に大きな役割を担っています。
Bionic 社の装具は、ロボットや機械で実現可能な限界で動作します。人間の肢の代わりになるよう設計されているため、歩く、走る、ものを持ち上げるといった自然な動作で生じる力に耐えられなければなりません。組み込まれている材料やコンポーネントは、動作時の力によって限界まで押され、時間とともに摩耗していく可能性があります。どの段階でも高いパフォーマンスを発揮することが求められます。この点は設計や製造時における重要なポイントです。
Bionic 社の人工装具は、名手のために作られた楽器とも言えます。そういった楽器は、最も美しく豊かな感情が生まれるよう緻密な調整が施され、そして繊細なタッチと長期間にわたる修練が求められます。Revival Bionics 社は、推進力を持つ義足についてのリサーチを開始しました。
下腿切断をした人は足首の関節とふくらはぎがないため、歩行時の押し出す動作が難しい場合があります。そして、下腿切断をした人の前へ動く動作や歩行時の押し出す動作を補助するために、義足を開発しました。
自然に歩いたり走ったりする際、前足が地面に着くときに、後ろ足が体を前に進める動作を行います。この動きはスムーズかつ効率的な歩行パターンを維持するうえで極めて重要です。
デモ機に組み込むことができて、すぐに動作させられる、高効率で耐環境性能もよく、コンパクトで産業用途のセンサー。Revival Bionics 社が求めていたのはそういったコンポーネントでした。
解決策
使用者の安全と足へのスムーズな感覚を確保し、力強い歩行動作を実現するために、磁気式エンコーダの搭載が必要不可欠でした。モータを精密に制御することで義足のスムーズかつ自然な動作が可能になります。加えて、使用者の足取りや歩く速さなどの変化に迅速かつ正確に義足が追従することができるようになります。
RLS 磁気式エンコーダは、Revival Bionics 社の義足のすね部分のモータ軸の前に組み込まれており、モータの効率的な制御と義足全体のスムーズな動作を支えています。
Revival Bionics 社は、静かで見た目にも優れ、自立的で心地よい、この義足をきっかけに、バイオ義足の使用を一般的なものにしたいと考えています。非常に複雑なデバイスであるため、バイオ人工装具は現在たったひとつしかありません。ただし、機能面で非常に優れている反面、制約もあります。歩くたびに高いノイズが発生し、高い剛性故の着け心地の悪さが問題でした。
OnAxis RMB20 磁気式エンコーダモジュール
今回採用されたのは RMB20 磁気式エンコーダモジュールです。コンパクトさ、分解能の高さ、業界標準に対応した出力方式が採用の決め手です。磁気アクチュエータと独立したセンサーボードから構成され、磁気アクチュエータの回転をセンサーボードに実装されたカスタムエンコーダチップが検出し、信号を出力します。
RMB20 磁気式エンコーダモジュールから位置と速度に関してのフィードバックが制御システムに送られ、このフィードバックをもとに制御システムがモータの動作を精密に制御することで、振動が最小限に抑えられ、スムーズな動きが可能になります。動作時のノイズの低減も期待できます。
RLS の磁気式エンコーダはコンパクトさで知られ、小さい占有スペースで組み込むことができます。また、過酷な環境に強く、摩耗にも強い設計です。人工装具のような、スペースが限られていて、信頼性と耐久性が求められる場面に理想的なエンコーダと言えます。
結果
RLS 磁気式エンコーダの導入により、動作の精密な測定とモニタリングが可能になり、義足を安全に制御して動作させることができるようになりました。また、使用者の着け心地も向上し、全体的な満足感も向上しました。義足を駆動するモータを精密制御できるようになったからこそです。
RLS 磁気式エンコーダは、組込みが簡単であること、費用対効果が高いこと、システム内の他のコンポーネントとの親和性が高いこと、といった条件を満たしていたことから採用に至りました。
Revival Bionics 社での義足へのエンコーダの組込み作業は、特に問題なく進みました。RLS が用意していた製品の資料が役に立ったからです。作業時間が短くなり、作業に必要な人数も減り、時間通りに完了するうえで効果的でした。最初のプロトタイプを手にしたある義肢装具士からは、業界最高の製品だと評価を得ました。バイオ義肢の新たな可能性を求め、イノベーションとテクノロジーの最先端の粋を集めた義肢ソリューションを作るという同社の姿勢が際立っています。
“最初のプロトタイプを見たとき、どう思ったかわかりますか?この分野で 100 年以上の経験がある企業が作った製品かと思いました。ほんとうに驚きです”Jerome Lamorere 氏 (Prosthetist Union の Vice-president)
今後の目標
Revival Bionics 社は改善を重ね、義足の試作機は人に装着してのトライアル可能なレベルになっており、今後、French National Institution of Invalids と French Training Hospital of the Armies との対話を控えています。同社は引き続き研究と開発に力を入れ、トライアルからのフィードバックやヘルスケア製品のプロバイダとの協力を通じて、義足の設計を改善していく予定です。
同社は他の装具分野にも進出し、障害を抱えた人の移動や行動を支える製品を開発していくことに機会を見出している。障害を抱えた人たちがより自立してアクティブに生活できる画期的な義肢テクノロジーを提供することで、障害を抱えた人たちの生活にポジティブな影響を与えていくことを目標として掲げており、重要かつ成長が期待されるこの分野でのビジネスに活気だっています。
“Overall, our experience of working with RLS was extremely positive, with a clear focus on customer service, ease of use and efficiency. The fact that there were no issues with the integration of the sensor shows that RLS magnetic encoders are designed with ease of use and integration in mind.”
Guillaume Baniel, CEO & CTO of Revival Bionics.
Revival Bionics 社について
Revival Bionics 社は、下腿切断を受けた人や下腿が麻痺した人のハンディキャップを克服するための、最新バイオメカニクステクノロジーを開発している企業です。
Revival Bionics 社の詳細については、www.revivalbionics.com をご覧ください。